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執筆者の写真グレイディー

別府物語

おそれから愛へ

 子供の時、ロキは自転車に乗ることが好きで、どこにでも自転車で行っていた。ある日曜日の夕方、いつものように自転車に乗って一日あそんだロキは、「もうこんな時間だ!お母さんにしかられるかもしれない!」と思って、いそいでペダルをふんでいた。そのとき、灰色の猫がロキの前に出てきた。ロキはびっくりしてブレーキをふんだ。速いスピードで走っていたので、ロキは自転車からおちてしまった。猫はせなかの毛をさかだてて、おこった後、走って行ってしまった。ロキの足は赤くはれて、手から血もながれていた。大好きな自転車もこわれてしまった。




 その日から、ロキは猫をきらい始めた。もっとせいかくに言えば、猫をおそれ始めた。出かけるとき、猫に会ったら、ちがう道を歩いたし、猫をかっている友だちともあそばなくなった。

 ところが、高校をそつぎょうして、別府の大学に留学することになった。別府に来て一番びっくりしたことは、猫が多いことだった。どこへ行っても猫がいる。先輩によると、たくさんおんせんがあるので、冬も道があたたかくて、別府は猫が住みやすい町だそうだ。「じゃ、ぼくが住みにくい町だな。」とロキは思った。あまり出かけないで、がんばってべんきょうして、早くそつぎょうしようときめた。

 そのまま3年生になった。ある春の日、行くところがないので、図書館で本を読んでいた。すると、つよい風がふいて、まどからさくらが入ってきた。顔をあげると、キャンパスのさくらがとてもきれいにさいていた。ロキは思わず外に出て、写真をとり始めた。そのとき、さくらの木の下から白い子猫がこちらを見ているのがわかった。ドキドキしながら立っていると、子猫が走って来た。よく見たら、子猫は長い時間さくらを見ていたので、さくら色になっていた。ロキが静かにせなかの上のさくらをとってあげると、子猫は小さく「ミャー」とないた。

 ロキはこの子猫をベッラと名付けた。最近は、じゅぎょうがない時間は外に出て、ときどきベッラを見ている。猫はかわいくておもしろい動物のようだ。ロキは「ベッラがいっしょなら、別府の猫たちとも友だちになれそうだ。」と思った。

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